超実践バリアフリー住宅事情④

やまね

2008年11月12日 11:23

お風呂編~自分のためのお風呂を作ろう

さて前回は、「将来自宅で高齢の親を介助するという前提で浴室の設計をする必要があるのか?」ということについて書きました。条件は我が家と同じく「家を建てるときに親と同居していない場合」でしたので、自宅での入浴介助はおろか、一般入浴すら困難な場合が多い。

よって、あまり過剰なバリアフリー設計は不要だろうということになりました。今回は条件を変えて、ずっと住み続けている自宅、もしくは今から新しく建てる自宅でどのように老後を暮らすか、そのためにはお風呂をどのようにしておけばよいかを考えてみたいと思います。

お風呂のバリアフリー対策を将来自分が自立して暮らしてゆくためのものととらえるのであれば、浴室の広さは1坪タイプ(160cm×160cm)で充分だと思います。これは最も一般的なサイズで畳2枚分の広さ、いざとなれば何とか介助者が付いて一緒に入ることもできるぎりぎりの寸法です。

最後まで自力で入浴するつもりでおり、もし介助が必要になった時にはしかるべき施設や訪問入浴サービスを利用する、そこまで腹をくくるのであれば、0.75坪タイプ(160cm×120cm)でもかまいません。

この広さなら、浴室の中で多少ふらついても壁に手を付いて転倒を防止することが可能です。出入り口の幅も、有効開口幅で65cmという一般的な折れ戸で対応できます。介助者に抱きかかえられての入浴や車椅子での入浴を想定しなければ、何も広い扉は必要ないのです。

浴槽の床からの高さは、当事者の体の状態によって多少変りますが、だいたい40cmくらいだと考えましょう。単に下半身が衰え足が上りにくくなっていたり、軽い麻痺があるが手が使えて立ったまま浴槽に足を入れることが可能なら、その高さはできるだけ低い方(約35センチ~40cm)が楽に入浴できます。

逆に痛みがあってどうしても足を上げることができなかったり、もう少し重度の麻痺があり自力でまたぎ越しができない場合は、エプロン(浴槽の縁に座れるよう、少し広くとった部分)や入浴介助用の椅子に腰掛けてから足を浴槽に入れることになりますが、この場合は逆にあまり低いと座ったり立ったりが困難になるので、浴槽の高さは40cm~45cmくらいが理想となります。

手すりは当事者の体の状態に応じて取り付けるのが一番良いのですが、最近の浴室の多くはユニットバスですので後から手すりを取り付けることはほとんどの場合できないと考えたほうが良いでしょう。よって手すりは事前に必要と思われる部分に取り付けてしまいます。

昔ながらのモルタル下地にタイルを貼ったお風呂なら、後から手すりを付ける事が可能ですが、近年はタイルのお風呂でも下地はボード類の可能性がありますので注意が必要です。ボードの種類によってはしっかり手すりを取り付けられない場合があります。

最低限必要な手すりを用途別に説明します。

・歩行用に横型の手すりをつけます。入り口から洗い場に向かうための手すりです。
できればドアの左右にあると安心ですが、洗い場に向かう1本だけでもかまいません。

・洗い場からの立ち上がり用と浴槽出入用に、洗い場と浴槽の真ん中に縦型の手すりを付けます。最近ではこのタイプの手すりにシャワーフックが取り付けられるものもありますよ。

・浴槽から出る時の立ち上がり用に、L型の手すりを洗い場と反対側の浴槽の壁に付けます。

・浴槽で体が沈み込まないように身体を安定させるための手すりがあると安心です。L型手すりの下部を利用してもかまいません。最近は浴槽自体に小さい手すりが付いている商品も多いので、できればそういうタイプを選ぶと手すりだらけにならず浴室内がすっきり収まります。

・エプロンや椅子を利用して浴槽にはいる場合は、他にも手すりが必要になる可能性がありますが、要るか要らないかわからないものを最初から付ける必要もないでしょう。


さて、ここまで書いてきて、皆さんはどう思われましたか?今仮に40歳だとして、30年後の自分の姿や連れ合いの姿が目に浮かぶでしょうか?それに水廻りというものは傷みやすく一番汚れも目立つ所です。30年40年経った頃には、取替えも検討する時期になっているのではないでしょうか?

バリアフリー対策は一体いつやるとよいのでしょうか?
新築の時に全て準備万端がベスト?
それとも将来の改装を前提にする?

その辺りの話はまた次回に・・・




最近改築したご夫婦のお宅です。80歳で認知症のご主人を70代の奥さんが介護しながらの生活です。おじいちゃんはまだ1人でお風呂に入れるのが救いです。正面に見えるのがシャワーフック兼用の縦型手すり、左に見える歩行用の横型手すりは・・・・・・・やぱりタオル掛けになってしまいますね

つづく・・・・・

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