超実践バリアフリー住宅事情⑤
お風呂編~お風呂のバリアフリーは転ばぬ先の杖になるのか?
お風呂のバリアフリーの話を書きかけで中断していました。もう少し続きを書こうと思います。前回は、「最後まで自立して暮らしていこうと思った場合、どの程度までお風呂のバリアフリーを考えておけばよいか?」についてでした。「ある程度の対策は新築時から必要だが、本格的なバリアフリー対策は一体いつ頃やればよいの?」というところで終わりましたね?では、今回はそのタイミングについて具体的に考えてみたいと思います。
もし40代で住宅を新築したり購入した場合、今流行り?の後期高齢者になるまでには約30年かかります。最近の水廻り商品は品質もよくなり、10年やそこらでみすぼらしくなる事はあまり無いでしょう。しかし、毎日過酷な環境で使われているトイレや浴室は、いくらお手入れしてもピッカピカと言うわけにはいかない・・・。30年もすると、そろそろリフォームを考えたくなる方が多いでしょう。
仕事でクライアントさんや自分の親を見ていて感じるのですが、住み慣れた自宅にいても、齢を重ねてゆくと徐々に生活に差し障りがでてくるもの。それは早くて70代中頃、概ね80歳の声を聞いてからが多いように思います。ちょうど後期高齢者という年齢に差しかかる頃、老いの影はちゃんと忍び寄って来るようです。
もちろん個人差があることですから、不幸にして若い頃に脳梗塞で半身に麻痺を抱える方もいれば、一生で手すりの1本もあれば元気で暮らせる方もいる。若くして障がいを抱えれば、必然的に早期の住宅改造を余儀なくされるでしょうし、一生お元気ならばその必要もありません。
一般的に考えて、経済的に安定している壮年期に家を建てる可能性が高いとするならば、水廻りの刷新を思い立つ年齢と、肉体的な衰えを感じてそろそろ本格的なバリアフリー対策をしようと考える年齢が約30年後に一致することになります。その頃が水廻りのリフォームに最も適した時期といえるでしょう。
だからといって若い頃に建てる住宅に、全くバリアフリー対策が不要というわけではありません。間取り自体の変更には余分な費用がかかりますし、場合によっては変更不可能なこともでてきます。将来主寝室となる部屋から水廻りまでの動線は、綿密に計画しておいて損はありません。やはり新築時のバリアフリー対策は「転ばぬ先の杖」になるのです。
そしてできれば、そのリフォームはまだ身体的にゆとりのある時期に行い、新しい設備に慣れておくことが老後のQOLを高めるポイントになります。浴室に限った事ではないのですが、高齢者にとって新しい設備装置や環境に慣れることは、多少なりともストレスになる・・・。まして認知症の傾向が顕れてから新しい生活に慣れることは、並大抵の事でないことを私は体験しました。
今日はお風呂の話というより、高齢者対応住宅に対する一般的な考え方が中心になりました。自宅で入浴介助をするための最新設備や補助器具など、話し始めればきりがないのですが、お風呂の話は今回で一旦終わり、次回からは他のスペース、トイレや廊下のことについて書こうと思います。この連載はまだまだしつこく続くのですよ
ばーちゃんの部屋とトイレ、洗面、浴室は、廊下を挟んですぐ近くに固めてあります。
以前廊下のない家というテーマで廊下を極力減らすメリットを書きましたが、高齢者の生活スペースを確保するためには最低限の廊下をうまく使うことがポイントになります。
悲しいかな、裸に近い状態でトイレや浴室に運ばなければならない時、他の家族の目に触れにくくする事は本人にとっても、他の家族にとっても、お互いメリットになります。
カーテンで簡易に間仕切をすることも可能ですしね。
関連記事