2008年11月11日

超実践バリアフリー住宅事情③

お風呂編~バリアフリーにこだわりすぎて、ばーちゃんが見えていない私であった・・・face07

高齢の母を引き取って同居する時のために、私達は介助可能な広さと開口部を持った浴室を作りました。そして1年前に母と暮らし始めたのですが、私達の思い通りにはいかず、母はなかなかお風呂に入ってくれません。

一人暮らしができなくなった母は、アルツハイマーを発症しており上肢下肢とも衰えが目立ちました。しかし1年前はまだ介護度も低く、自力で入浴できる状態にあったはず。それに曲がりなりにも、高知で一人暮らしのうちは辛うじて自分で風呂にも入っていたのですが・・・・・

高齢者というのは認知症がなくても新しい環境に適応する事はかなりのストレスになります。ことによると環境の変化が認知症発症のきっかけになったりする・・・特に母の場合、昔から自分の生活習慣を頑なに守るタイプで、全くと言っていいほど新しい環境に順応しません。

加えて大変プライドが高く失敗を極端に恐れるため、使い慣れないものを触るのが不安なのです。お風呂に関しても、シャワーや水栓の使い方を失敗するのを恐れているのですが、別に我が家の水栓、特別なものではないのです。母の自宅についていたものとほとんどかわらないお風呂用のサーモスタット付きシャワー水栓。

同じものでも場所がかわると使えない、まして洗濯機や炊飯器のような電化製品は、機種が変ればもう絶対に使うことができません。また、生活に対する意欲がなくなり、身の回りを小奇麗に保つ事が難しくなる、これらは全て、アルツハイマー患者の特徴のようです。

「お母さん、お風呂にどうぞ」「こんな汚い年寄りは最後でかまん(かまわないの意)」
「お母さん、お風呂にどうぞ」「こんな食べてすぐには入れん」

「お母さん、みんなお風呂に入ったよ。気楽にゆっくりはいってね」
「もう遅い、疲れたから今日はいらん」
家族全員、食後に一服する暇も無く、ゆっくり浸かって疲れを癒すことも我慢して、今日こそはばーちゃんのために!と意気込んで風呂にいれようとした挙句このセリフをのたまわれると、さすがに頭の中が真っ白に・・・

しかし、ばーちゃん、最後に風呂入ったの何時だった?ってくらいですから私の気は焦るのです。
「お母さんはお昼たっぷり時間があるから、ゆっくりお昼にお風呂使ってよ」
「私はすごく冷え性じゃけ寝がけに入らんと風邪を引く」
「お母さん、ウチは家中暖かいから湯冷めはしないよ」
「私はデリケートじゃけどんなに暖こうても湯冷めするき」

こんな会話を繰り返すばかりでちっとも風呂に入ってくれません。要するに理由はなんでもいいんです。入りたくないっていうか、はなっから入る気がない、これもアルツハイマーという病気によるものでしょう。車椅子介助可能なやたらと広い浴室も、余計に母の入る気を削いだかもしれません。

そうこうしているうちに母の身体は衰えを増し、自力で入浴が不可能になりました。
「お母さん、手伝うからお風呂はいろうよ」
「一人でできるからええ」

「お母さん、膝が痛いのなら椅子に入ってお風呂に入ろうよ、洗ってあげるから」
「私はこうしてしゃがまんと体を洗えん!」
そうこうしているうちに、母は一月以上風呂に入らず二月以上洗髪をしませんでした。
そして私は思ったのです。

なにがなんでもディ・サービスを利用するのだ!

かくして12年前になんとな~く計画された
親を引きとったら自宅で介助して入浴させるはずである作戦
は、このように見事に頓挫したのであります。

検証・・・・・将来、高齢になった親を引き取ることを前提に、
       入浴介助ができる浴室を作っておく必要はあるのか?

結論・・・・・不要である

理由・・・・・高齢者にとって見ず知らずの新しい環境に慣れることはかなりの労力を要する。
       特に認知症の場合はプライドが邪魔をして子による介助を拒否する場合が多い。

対策・・・・・将来、親を引き取るつもりであるなら、認知症を発症する前に同居を始めるか、
       定期的に来訪してもらって、器具類や生活に慣れてもらうことが必要。
       家族が介助して入浴させる事はかなり困難と考えた方がよい。
       特に認知症がある場合は、ディ・サービスや訪問入浴介助の利用が望ましい。
       
       最後まで自立して入浴ができる可能性もあるので、そのための対策は必要。
       大きさ~1坪タイプで充分である(1.6m×1.6m)
       手すり~入り口から洗い場までの歩行用補助手すり
             浴槽に出入りする時に体を支えるための手すり
             浴槽内で入浴姿勢を安定させるための手すり
       床   ~滑りにくく冷たさを感じにくい素材がよい。タイルは避ける。
       浴槽 ~症状によって35cm~45cmくらいまで使いやすい高さは異なるが、
             とりあえず床からの立ち上がりは汎用タイプの高さである40cmに。

最低限これだけのことをしておけば、かなりの場合に対応できるでしょう。広さにしても1坪タイプなら、狭いながらも辛うじて介護者が一緒に入れる広さでもあります。自立して最後まで自宅で入浴をするための浴室については次回に詳しく書きます。いずれにせよ、どのような場合も、脱衣所と浴室の暖房・保温は必要ですよ。
       
            
       

超実践バリアフリー住宅事情③超実践バリアフリー住宅事情③
これは親子折戸です。よくある汎用タイプの浴室用折戸に、必要なときには開く事ができる子扉が付いています。3枚引き戸と同じように広い開口部をつくることが可能です。ご高齢の御婦人の自宅に取り付けましたが、こちらも一度も子扉が開かれることはありませんでした。

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この記事へのコメント
本出せますね。素晴らしい。 勉強になります。
うちも風呂嫌いだったなぁ。あの頃とカブって涙が出ました。浴槽内で突然暴れ出し‥。何度か溺れそうになった。それからは‥。湯を浅目にし、shower浴状態にした。浴槽に入る事が出来ても 浴槽から出る事が出来ない。出る事がワカラナイ‥。「またぐ」事がワカラナイ‥。先に湯を抜いてウントコショドッコイショと‥。
入浴はカナリ負担だった。だから後半はディにお願いした。その時間が息抜きの時間だったな‥。
Posted by 桃 at 2008年11月11日 17:27
そうなんです!先日のお宅はおばあちゃんは自宅でお風呂に入るつもりだったみたいだけど、(実際に以前はお風呂に入ったりしていたけど)結局は、浴槽へまたいで入るのが大変だったようで、自宅のお風呂に入らないという結果になったようです。(言葉が足りませんでしたね。汗)

結論の意見に賛成です!そして対策にも!
介護は今の自分に関係なくても、そのうち行く道ですもんね。すごく参考になりました!ありがとうございます!
Posted by ようさん at 2008年11月11日 17:47
なるほどです。
勉強になります。
今、一緒に住んでるばあちゃん(83歳)に、もし店舗兼住宅で良いところが
あれば買って・・・なんて話をした時にばあちゃんも一緒に住もうよって
言ったら、私は喜んでくれると思ったけど、やっぱり何十年と住んでた家、近所付き合いから離れるのはストレスになるんですね。
まあ、店舗兼住宅の物件は見つかってないんですけどね。
Posted by 花・花花・花 at 2008年11月11日 18:58
よく分かりました。
今のうちに聞いてみますね。
「デイサービスでお風呂に入ってくれる?」と(^^)

デリケートなおばあちゃん、寒くなるけどお身体に気をつけてくださいね(^^)
なんだかやっぱり、憎めませんよね。
Posted by パレット at 2008年11月11日 19:45
ある程度歳をとってから環境と身体の変化についていくのはなかなか困難なことですよね。
というか、ほぼ無理に近い場合もあります。
それでも、環境を変えざるを得ない事だってたくさんありますし…
当たり前ですが、在宅介護では同居をされる家族が一番大変ですよね。
いずれ私も通る道になると思います。覚悟しなければ…。

やはりデイサービスとしては何としても入浴していただかなければならなくなるわけですが、
銭湯のように思われた場合→「お金持ってきてない」となったり…
で、デイサービスの説明をしたところで理解していただけるはずもなく…
となることも往々にしてあるわけです。が!そこはプロですからっ!!
「あの手この手」を考えましたね(遠い目…)。

だからといってお金をもってきてもらって受け取るわけに行かないですしね。
ご家族からお金をいただいていますと言っても納得されませんしね。

こちらで「入浴手形」みたいなの(ちょうどいいのがあったので)を用意して、
「ご家族からこれをあずかっているので大丈夫です!」と言ってみたり…
(これは特定の方には効果絶大でしたね♪)

でも、それでもどうしても無理ということがありました…プロ失格です。はい。

あ、すいません。長くなっちゃいました(汗)
Posted by ふれっちふれっち at 2008年11月11日 22:06
自宅で入浴できず・・DSで・・。
私だったら知らない人に裸をさらして入浴なんて嫌なんです。
入れないから年寄りだから・・っと
障害があるから・・。年寄りだから・・家族の手に負えないから・・。
っとこちらの都合を年寄りに押し付けている事・・。反省します。
このお風呂・・欲しい。
Posted by 弟子 at 2008年11月12日 09:12
追伸
力なく彼が手から離れた時の
感触が・・。
日に日に悲しさが増す・・。
もう一度抱きしめたいし・・あいたい・・
やまねの気持ち本当に嬉しいです。
Posted by 弟子 at 2008年11月12日 10:42
申し訳ありません。
さんが抜けてしまいました。
御免なさい。
Posted by 弟子 at 2008年11月12日 12:00
■桃ちゃん^^

そうか・・・じーちゃんも風呂嫌いだったんだ^^;
大変だったんだね・・・やっぱり桃ちゃんはえらいよ、私、そこまで努力することなくDS預けちゃった・・・

ばーちゃんまた昨日から膝悪化。垂れ流し状態で一日であっという間にお尻が痛痛(>_<)
今日はDSで機会浴お願いしました。
ばーちゃん嫌がるけど、とりあえず衛生確保。DSありがたいm(_ _)m感謝

■ようさん^^

やってみないと解らない事ありますよね・・・私も日々反省です。
だいたい介護保険でおりる住宅改造費が20万でしかも一割負担、上乗せの上限75万までの制度も所得制限で必ずしも利用できるとは限らない・・・

この時のようさんのクライアントさんにしても、その中でおばあちゃんのためにやってあげられることって、結局手すり付けくらいになっちゃいますよね。この場合は浴槽取り替えて低くしてあげれば自立して入浴できたってことなんですよね?でも20万では無理・・・・・

もう少し効率よく利用できる介護保険であってほしいといつも思いますね!

■花・花さん^^

83歳・・・ウチのばーちゃんと同じ^^vでも、お元気なんだもんね?

いくらお元気でも83歳という年齢考えると、新しい環境は結構辛いものがあるかもしれません。自立している間は今のままにしてあげたほうがよいのかも・・・・・

でもウチのばーちゃんみたいに体弱ってくると、1人で暮らせないから、無理をしてでも連れてきて同居する事になる。それがますますばーちゃんの自立を損ない認知症も進む・・・・・悪循環なんですがしかたがないです。本当は私が高知に行ってばーちゃんの家でばーちゃんの世話するのがばーちゃんのためにはベスト。でも、それをやっていたら私達の生活が破綻します。

ある程度になったら割り切るしかないよね。言い訳かもしれないけど、全てがカンペキにうまくゆく事なかなかないですもん。
花・花さんはまず赤ちゃんとご主人の仕事と自分の仕事優先して、もしおばあちゃんが弱ってきたら「かんにんなあ~」といって連れてくればよろし^^v
それはそれで喜んでくれるよ。

それより、まずは元気な赤ちゃんを!^^
早く出てくるといいねぇ~

■パレットさん^^

ありがとうございます。
ばーちゃん、弱って抵抗力がないから、気をつけてやらねば・・・
で、インフルエンザの予防接種受けに入ったら、膝が炎症起こしてて熱があるので延期になっちゃった・・・(;_;)困った困った・・・・・

ウチのばーちゃん、ボケる前は「あんたに迷惑はかけないように、最期まで1人でしっかり暮らすから大丈夫。ボケたり足腰立たなくなったら老人ホームに入るから」と気丈にゆうておりましたが、・・・・・忘れたようです^^;

パレットさんのお宅はお父さんもお母さんもずーっと入りなれたお風呂だからかなり大丈夫な気はする^^
でも、将来のことは考えておいたほうがやっぱりいいですよね。
でも、やっぱり「デイサービスでお風呂に入ってくれる?」とは聞きにくい~^^;

■ふれっちさん^^

入浴手形ね!(^◇^)最高~!お年よりはお金の事が何より気になるもんね?

ウチのばーちゃんもそうです。
利用料がかかっていることわかったら絶対止めるって言うに決まってるから、レンタルの車椅子もベッドもDSの費用もお昼のご飯代も、全~部タダだ!って言いくるめてあります(爆

最初はDSもDSの入浴も嫌がっていたばーちゃんですが、施設のみなさんの尽力で最近は行けば楽しいところって感じになってきました。
他人にお風呂に入れられるのは嫌だけど、自分で入れないし入れば気持ちはよくなるので、あまり文句言わなくなりました。感謝感謝です。^^

ふれっちさん、メールありがとう!また私もご連絡しますね。まずは日曜日のshoulder頑張って!見に行きますよ、楽しみにしてます!

■お弟子さん^^

ごめんね、私、押し付けてる・・・・・^^;
本当はばーちゃん、人に入れてもらうなんて絶対に嫌な人。
でも、衛生状態悪悪(-_-メ)
無理やり我慢させてる私は鬼娘ですわ(大汗

でもDSのお風呂は大分慣れたみたい。みんな丁寧だし優しいし、羞恥心を大事にしてくれるみたい。SSの時は男性職員が入浴介助にはいるので怒りまくりだった。「お婆さんだと思って!馬鹿にして!馬鹿にして!」って・・・・・

私もできるだけ自宅でと思ったけど、やっぱり無理・・・・・
でも、自分はこうなりたくないなとやはり思ってしまいます。
矛盾してるな私・・・・・

まだ辛いよね・・・?
でも、なんか見守ってくれてるような気配ない?^^
きっとそばにいるよね!^^
Posted by やまね at 2008年11月12日 12:44
家族の方はそれで問題ないんですよっ。
(表現が上手くできずに御免なさい。本当にごめんなさい)
家族の方の押し付けではなく・・
私達サービス提供者がその気持ちを充分に理解する事
そこなんです。
その気持ちを理解できていないサービス提供者が多い(私を含め)
DSやSSは家族の方のとりでなんです。
仕事をする上で時間や流れを気にして
下手すると芋洗い的な入浴にもなりかねない・・。
誰も人の世話になりたい人はいない
その人のじれんまや葛藤少しでもわかる人になりたい・・。
提供者側が上から目線ではいけないと言うことで・・。
あーーーーーー上手く文章に出来なくて誤解をさせてごめんなさい。

見守ってる気がしてなりません。
首をかしげて笑ってこっちを見ている気がしてます。
苦しかっただろうに・・。
又お金かかる・・なんて思った事後悔してます
命には代えられないのに・・。とほほ。
Posted by 弟子 at 2008年11月12日 15:02
■お弟子さん^^

お返事遅くなってごめんなさい。
「御本人を尊重して」ってのはもちろん基本で大切なことでしょうが、実際に100%実行するのは難しいですね・・・
家族はもちろん、プロの方でも大変だと思います。

「家族の最後のとりで」
本当にそうですね。ここで断られたら、もう家族は終わりですわ。
討ち死に覚悟で戦って、最後にパタッと倒れる・・・もしくは無理心中・・・
「家族の最後のとりで」と思ってやっていただける皆さんのおかげで私もなんとかやっていけます^^v

でも、ひどい事いわれたこともありますですよ、施設によってずいぶん温度差があるようですね。

悲しみは少しずつ薄れて、きっと楽しかった思い出だけが残るんじゃないかな?
また新しい出会いがありますように!^^
Posted by やまね at 2008年11月19日 21:46
 
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